身体をつかった音楽活動は、音楽の授業で音楽的特徴を知覚・感受する方法として従来から音楽理解のために用いられてきました。ここでは、曲種の特徴、音楽のルーツを深く感じることのできる動きを、専門家の指導場面を参考にミニマムに取り出し、子どもたちが模倣して遊ぶ活動として紹介します。楽譜上では表せない、拍やリズムの質が、踊ったり、動いたりすることで感じられるようになる経験を大事にさせたいものです。
このサイトは、小学校の授業や保育現場でリズムの原点に触れながら、多様な音楽や文化に興味をもってもらうことを目指して創りました。動画を見ながら子どもたちと活動してください。
音源(音符マークのmp3音源ファイル)は自由にご活用ください。
民謡の動き
ひらいた ひらいた
扇子の稽古
小物を使う踊りが多いのも、日本文化の特徴です。お辞儀などが踊りの前後にあるのは複数文化にみられます。
扇子の開閉では扇子の面を、床に平行に構えて動かしています。手の動きや、所作の様子を模倣してみましょう。
日本舞踊では、扇子で太陽や風などを表したりするのです。
民謡の動き
ひらいた ひらいた
小学生チャレンジ
専門教育を受けていない、1年生から4年生までの子どもたちがチャレンジしました。まず、唱え言葉のリズムはすぐにつかめました。
日本舞踊の扇子の開閉は固く、稽古なしではすぐにはできませんでしたが、華やかな模様を見て「きれい」「やりたい!」と、男女問わず自発的に開閉にチャレンジしていました。
民謡の動き
桑の木の周りで
児童の音楽活動
小学校高学年の授業でわらべうたに親しませるのなら、ルーツを知ったり、遊び方を工夫したり、文化を比較したりできるような迫り方をしましょう。
これまでに5年生で、おすすめ遊び歌チーム、日本わらべうたチーム、おすすめ唱歌チーム、イギリスわらべうたチームにわかれて、歌や遊び方を工夫する授業を実践したことがありますが、発達に即した課題設定が重要だと思いました。
民謡の動き
マフィン・マン
児童の音楽活動
色々な遊び方がありますが、コロナ版では、中央の子どもをリーダーにして、その周りを囲む子どもたちがスキップでまわり、歌の終わりで中央の子どもが誰かを指さしました。今度は中央が2人になって歌が始まります。歌の終わりで中央の2人がまた別の友達を指名し、今度は中央が4人に増えます。問答歌にする場合は、答えの歌詞を、中央の子どもたちが歌います。
民謡の動き
ティニックリング
小学生チャレンジ
短時間で多くの子どもが練習できるように、みんなで並んでカウントしても楽しいです。
児童は「楽しくてスリルがある」と思う子どもと「こわい」と思う子どもがいますから、竹をおいていても、跳ぶ児童と歩いてステップをふむ児童がいました。ビニールテープや竹をおいたままで3拍子を楽しみ、希望者が、竹を動かすバンブーステップにチャレンジするのもいいと思います。
民謡の動き
そらかぜ
ダンスの様子
国立国楽院が主催した2017年の国楽童謡大会を現地で鑑賞しました。写真は金賞を受賞した子どもたちです。
中国や日本の音楽は、2拍子系のリズムが多いのに対して、朝鮮半島の音楽は、1小節や1拍を3分割するリズムが多くあり、それらのリズムの組み合わせは長短(チャンダン)と呼ばれています。穏やかなチャンダンも躍動的なチャンダンもありました。
リズミカルな動き
サルサステップ
リズム楽器と一緒に
小学生は、「ヒップホップ」や「ラップ」なら一定のイメージをもっていますが、サンバやサルサのリズムも体験してほしいと思います。
ここでは、キューバ紀源のサルサステップを、学校でもできる基本ステップだけとりだして紹介します。私の唱え言葉は「1.2.止まる,1.2.止まる」です。
リズミカルな動き
サルサステップ
小学生チャレンジ
子どもたちは、自分の好きなアーティストのダンスは、よく模倣していますが、学校ではより多様なリズムの起源や文化にアプローチしていきましょう。
小学生がチャレンジしているときの、サルサ音楽は、なんとAIが作曲した著作権フリーの音源です。“Salsa Kids” で検索した曲などにあわせて、マラカスでリズム伴奏するのも楽しいですよ。
リズミカルな動き
Hip Hop
ランニングマン(前)
ここでは、走っている人を表しているかのような、ヒップホップの基本ステップ、ランニングマンというステップを、Reina先生が紹介しています。
小学生がチャレンジするのにぴったりだと思います。ステップ1では、足の動かし方を、ステップ2ではなめらかな動きに挑戦してください。
リズミカルな動き
Hip Hop
ランニングマン(横)
ここでは、4拍子のリズミカルな音楽、Hellberg&TobuのSprinklesに合わせて、ランニングマンのステップを行っています。
後ろに下がる足を2段階ですべらせることにより同じ位置で踊ることができます。
足のステップに慣れてきたら、腕や手もつけて踊ってみましょう。
リズミカルな動き
Hip Hop
小学生チャレンジ
日本の小学校にはダンスの科目はないので、できる出来ないにとらわれないでください。
むしろ、ダンスしながら多様な音楽を聴く体験が、よい影響をあたえると言えるでしょう。先頭の小学生は3年生ですが、ランニングマンの動画をみてすぐにステップをマスターしていました。
こどもの歌で動く
We wish a Merry Christmas
We wish a Merry Christmas
この振り付けは、毎年こどもたちと楽しんでいたヒット作です。
拍の重心があがっていく3拍子の感じを拍をうつ高さを変えて表し、エネルギーが高まったところで相手と手をあわせるようにしました。(コロナ禍では腕タッチ)
最後はHappyな気持ちを表すために速く大きく動いて万歳をします。
こどもの歌で動く
Famous English song
Happy Birthday to you
この曲のステップが、ポーランド発のヴァルソビエンヌの変形と中館栄子先生に教わりました。
すべての拍を強拍として手拍子をうち、もりあげる活用の多い歌ですがフレーズを感じとる聴き方も味わいましょう。
動画の大学生と一緒に、ホップとステップを楽しみましょう。
こどもの歌で遊ぶ
Famous English song
Head, Shoulders, Knees & Toes
原曲はお酒を飲みながら歌う陽気な歌でした。高学年まで楽しめる体遊びの歌として親しまれています。子どもたちは家に帰っても遊んでくれたようです。
http://www.mu-tech.org/Traditional/There_is_a_Tavern_in_the_Town.html
(音楽研究所サイトより)
こどもの歌で動く
ファランドール
小学生チャレンジ
もともと、手をつないだり、ハンカチでつながって踊るのですが、ここではスカーフの端をもって歩きました。
誰でも一緒に楽しめる音楽活動だと思います。年齢にあわせて、心地よく動ける速さで伴奏するのがベターです。
舞踊学者の一般的見解に、人間の最も古い芸術に舞踊があるという考えがあります。
踊りと歌は時を重ねて始まり、自然に手拍子がつき、手拍子が楽器となり、伴奏が複雑になり、ダンスも歌も演奏もそれぞれ独自に発展して、様々な芸術的様式が編み出されていったと考えられます。
舞踊民族学研究者でダンサーの柳田知子氏は、アフリカンダンスについて「人が共同体や自然、目に見えない世界と調和しながら、健康かつより良く生きるための知恵そのもの」(アフリカンダンス入門, p9)であり、激しく踊るイメージだけに偏りがちなアフリカンダンスを、子どもからお年寄りまでが踊っている伝統的なダンスから、シンプルな動きで紹介してくださいました。
ギニアのマタン地区(芸術家の多い地区)出身のダビット・シラ氏からは、街や村において、基本リズムは同じでも、アレンジの有無には大きな違いがあり、指導は模倣のみ、楽譜はないこと、アフリカの言葉のリズムが多様であることなどを教わりました。そして、庭から山羊の鳴き声が聞こえる山口県のアトリエで、皮の破れた大学のジェンベを修理していただきました。
踊りの模倣は、小学校では、音楽を自分のものとして知覚・感受し、音楽のルーツをとらえる文化理解学習の時間になるでしょう。また、幼稚園や保育園では、日常生活を模倣するダンスの原点に素直に入りこめるでしょう。拍やリズムの質が、踊ったり、動いたりすることで感じられるようになることを実感してください。
西アフリカのリズム
エコンコン
エコンコン(ジョラ族の踊り)
祝いの儀礼で音やリズムを伴う習慣は、人類のルーツにあると思います。
柳田知子先生の解説をききながら、お祝いの場面で踊られる「エコンコン」を楽しみましょう。
作物を刈り取る動きなど、自然発生的に生活がリズムやダンスにになっていることが分かります。
動画のなかに「悪いニュースは聞きたくない」という動きが登場します。
嫌なニュースや悪いエネルギーから逃れたいと思う気持ちは人類共通の願いだと言えるでしょう。
西アフリカのリズム
レンジン
レンジン(マンディンゴ族の踊り)
マンディンゴ族は鳥の羽を羽ばたかせるように踊る特徴があるそうです。
日本にも、校章や社章、家紋などの文化がありますが、アクティブな形で各民族が象徴され、アイデンティティとして踊りがあることを知って感動しました。
種まきの動きや、作物が実った時に、育てた実や種を取らないでという祈りが込められた動きなど、一連の動きのエピソードがとてもユーモラスです。
踊りの難易度は少し高めです。
西アフリカのリズム
カキランベ
カキランベ
ジェンベの生伴奏で踊る、贅沢なワークショップを開催しました。
ジェンベの拍と、降ろす足の着地を合わせ、ダウンビートを意識してステップをふみました。
カキランべは、元来、身体や心の病を癒す神様であると考えられていましたが、近年は、農耕の神であると考えられていて、豊作を祈願する儀式でカキランべが踊られるということです。
体幹でビートにのり、バウンドしている先頭の柳田先生の動きからは大地を踏む強い生命力を感じます。
ジンベ
アンサンブル
ジンベ 初体験
西アフリカの広い地域で用いられている打楽器で、地域によってジェンベと呼ばれたり、日本ではジャンベと呼ばれたりしています。ヤギ皮をリングで挟んでロープで張って創られています。高音・中音・低音の3つの音色の鳴らし方をレクチャーしていただき、榎本先生と合わせて演奏しています。
日本の箏のリズムにも「カラリン」「ツンツン」など指導場面でつかわれる唱歌(しょうが)がありますが、ジンベの奏法にも、「グン」「ゴド」「パ」などの太鼓ことばがありました。
ジンベ
ジンベとバラフォン
バラフォン初体験
ギニア出身のジンベ奏者、DAVID SYLLA(ダビット・シラ)氏から、バラフォンの繰り返し伴奏をレクチャーしてもらい、ジンベとあわせて遊んでもらいました。
西アフリカで広く用いられている木琴・バラフォンは、木の音板の裏に、共鳴用の丸いひょうたんがずらりと付けられ、各ひょうたんの穴には、薄い膜(ビニール)が貼ってありました。演奏すると、優しい音色の余韻にわずかにびりびりと震える音が聴こえます。
ダビットさんは、山口県でジェンベ教室&修理工房「アトリエ・ワリババ」を営んでおられます。
ククのリズム
ククのリズム
ククのリズム(初心者のために)
西アフリカのリズムのなかでも有名で、儀式やお祭りなど伝統的なイベントで登場するそうです。
アトリエ・ワリババを訪問した時、初心者でも模倣できるリズムを教えてください、とお願いしたらククのリズムを演奏してくださいました。
「カッ グンゴド カッ グンゴド」と太鼓がおしゃべりしているようです。
より、本格的な演奏は、ヨーコさん(妻)によってアップロードされています。
https://youtube.com/shorts/mh6_7pETLC0
2023年3月に卒業した沖縄出身の卒業生から、「幼少期、子ども会でみんなが道を踊って練り歩いた」と聞き子どもの日常に踊りの文化が根付いていることを実感しました。
教科書教材や教科書参考曲として掲載されている《てぃんさぐぬ花》や、沖縄の童謡《赤田首里殿内》(あかたすんどぅんち)等を沖縄出身で三線教室講師の中村盛博氏、広島女学院大学の桐木建始特任教授に演奏していただきました。また、沖縄県出身で呉を中心に琉舞の活動をされている大崎清子氏に、谷茶前を踊っていただき、《赤田首里殿内》を紹介いただいたり、三板(さんば)の奏法をレクチャーしていただいたりしました。
その後《赤田首里殿内》を教材化して音楽研修会で音楽づくりの教材にしたり、公立小学校数校で楽器と唄のアンサンブルの授業づくりを行ったりしました。
沖縄の民謡
沖縄の民謡《てぃんさぐぬ花》
三線の弾き唄い
「てぃんさぐぬ花」は昭和50年代から小学校音楽科の教科書に頻繁に登場しています。実は、親孝行を薦める訓示的な歌詞内容ですが、なめらかな旋律と穏やかな曲想をもつため、命令的な印象は感じられません。
広島沖縄県人会顧問 三線教室講師の中村盛博さんと広島女学院大学特任教授の桐木建始先生の演奏です。ゆらぐようなおおらかな唄い方と響きを味わってください。
沖縄の打楽器
三板(さんば)
三板の奏法
沖縄県人で、呉を中心に琉舞の活動をされている、南風(ふぇーかじ)の大崎清子さんに、沖縄の郷土楽器・三板(さんば)の奏法をレクチャーしていただきました。
とてもよくわかるのでチャレンジしてみてください。
学校にあるカスタネットは知っていても沖縄の三板(さんば)を知らなかった人もいるのではないでしょうか。
公立小学校で出前授業をした時、子どもたちは沖縄民謡にあわせて、自由に伴奏して楽しんでいました。
赤田首里殿内
あかたすんどぅんち(広島沖縄県人会)
三線と唄《赤田首里殿内》
現在の那覇市首里赤田町の祭礼で唄われている唄で、沖縄独自の弥勒信仰により太平の世界を願う歌詞がついています。研究協力者から、「盆正月に祖父が唄っているらしく、沖縄出身の子どもがこの曲を知っていた」という話を聞いて、子どもだけが歌う童謡ではなく、世代を超えて唄われていることがわかりました。
♪みーみんめーは耳、♪ひーじんとーは肘ですが、しーやーぷー、いーゆぬみー等の意味は諸説あり、囃子言葉や手踊りとしての価値があります。